ポストモダンの終焉を宣告した米大統領選挙

ポストモダンの終焉を宣告した米大統領選挙


アメリカ大統領選挙は日本時間の15時現在、共和党のトランプ候補が、244人の選挙人を獲得してリードしています。
→16時過ぎ、トランプ候補の当選が確実になりました。

今年2016年は、世界的にポストモダニズムが崩壊した年です。

広島瀬戸内新聞では、ポストモダニズムを「格差拡大+国際主義+多様性尊重の傾向を持つ政治家、政党、政治勢力、思想」と定義しています。

アメリカではビル・クリントンやブッシュ父子などが代表例です。

日本では1990年代における民主党右派や2000年代前半の小泉純一郎さんが、その流れに位置づけられます。

ソ連が崩壊したことを契機に、西側、とくにアメリカや金融資本主義は「自分たちのやりたい放題」だと勘違いし、暴走を加速しました。

一方、元左翼の知識人たちも、一定の豊かさが実現したことを背景に、階級格差の問題よりも、ジェンダーや情報公開、環境と行った問題にシフトしていきました。

あるいは、大手企業や官僚機構などの大きな力と労働者や一般市民が対等であるかのような幻想を振りまいていったのです。

そうした結果として、1990年代末頃には、グローバリズムによる矛盾が噴出していきました。

それへの労働者側からの反撃の一つが、1999年のシアトルでの反WTO闘争でした。

他方、ポストモダニズムの特に右派のチャンピオンがブッシュ大統領(息子)です。

彼は、911テロを奇貨として、アフガンを攻撃。さらに、テロの黒幕がサウジであったことを隠蔽し、イラクに濡れ衣を着せます。そして、2003年にはイラクへの「予防的先制攻撃」を開始しました。「モダン」の枠を超えて、暴走を加速したのです。

「モダン」の時代も、もちろん、朝鮮戦争ベトナム戦争などの戦争はアメリカなどはしてきました。しかし、あくまで国連憲章での「集団的安全保障」や「自衛権」の発動の枠内で行ってきたのに対して、「予防的先制攻撃」という、その枠さえも踏み越えた戦争へ突入していきました。

イラク戦争は、しかし、アメリカを泥沼に陥れました。
このことへの批判も高まっていきます。

他方で、野放図な金融資本主義は、2007年から2008年の金融危機を招きました。

ポストモダンの破綻が明らかになった2008年に行われた大統領選挙でオバマが勝利し、2009年に日本の民主党が政権を獲得したのはそうした流れです。

しかし、ポストモダン側の抵抗も激しく、オバマイラク撤兵など、一定の成果を上げつつも、核廃絶などの面では後退します。

日本の民主党政権も、官僚に敗北。信望を失ってしまいます。そして、自民党安倍晋三総裁の復権を許してしまいます。

EUでも加盟国間の格差を背景に矛盾が拡大。難民問題も契機に、求心力が低下していきます。

2015年には、ギリシャやスペインやポルトガルで新しい左翼政党が躍進。さらには、イタリアでは反EU政党が台頭。
そして、2016年にはイギリスがまさかのEU離脱を決断します。

いまや、ポストモダニズムが健在なのはドイツとフランスくらいですが、フランスでも、展望を失った若者がISに参加し、ドイツでは反難民政党がバカ受けするなど、ポストモダニズムの価値観が大きく揺らいでいます。

トルコでは、エルドアンが、軍部のクーデター未遂を契機に、独裁色を加速する一方で、ロシアに接近。

日本では安倍総理が、民主党への失望の反動も利用しながら、国家社会主義色を強めています。

今回のアメリカ大統領選挙
1,二大政党制度の不毛
 ポストモダン新自由主義者クリントンか?
 国家社会主義的ともいえるトランプかの二者択一を迫られる。

2,ポストモダニズムの道連れで、多様性の尊重や民主主義が危うくなる。

という教訓を残しています。

そして、多様性や民主主義を尊重したいならば「階級格差の拡大」から逃げてはいけない、という教訓も残したのではないでしょうか?

ですから、アメリカ民主党はサンダースを候補者にしておいた方がよかった、とも言えるでしょう。

日本について言えば、以下のことは言えます。

トランプ大統領で、アメリカが東アジアでのプレゼンスを後退させるのは間違いありません。
だからといって、日本が単独で、軍事力で中国やロシアに対抗するのは無理があります。
経済的に相互依存も進み、なおかつ、経済力で抜かれている相手に軍事力で対抗することは、難しいでしょう。
フィリピンのドゥテルテ大統領などを外交面では見習うことも今後重要ではないでしょうか?