女性の知恵が生きる中山間地・広島県三次市の甲奴町

女性の知恵が生きる中山間地・広島県三次市の甲奴町
2012年 6月 4日 22:15《広島》 【取材ニュース】 <人権> <市民活動> <性> <経済> <自治体> <選挙>
さとうしゅういち

http://www.janjanblog.com/archives/73735

広島県北東部の中山間地に位置する三次市甲奴町。2004年の市町村合併甲奴郡甲奴町が、三次市に併合されました。カーター元大統領がこの地を訪問したことにちなんで街の商店街の中心は「カーター通り」と呼ばれています。

 さとうしゅういちは、2002年度から四年間、広島県の備北地域保健所に勤務し、介護保険や医療などの行政を担当しました。甲奴町においても、役場(現三次市甲奴支所)や、福祉関係の皆さんにはお世話になっています。

 この甲奴町も、他の中山間地同様、超高齢社会、そして過疎化が進んでいます。集落総出の草刈りなどもなかなか成り立たない、イノシシ対策にも苦戦するなどの実情があります。一方で、最近では、女性の活躍が目立ちます。

 今年4月に市議に初当選した山村恵美子さんと彼女の当選後、初めて再会しました。



山村恵美子さんと緊張気味の筆者(左)。甲奴地区では、旧甲奴町議会時代からなんと女性はゼロだったのに、山村さんと仲間たちがそれを打破した。

山村さんは甲奴町地区で初の女性議員です。山村さんは、わたくし、さとうしゅういちにとり「エソールひろしま大学」応用講座(2008年度)の同級生です。
 
広島県北部「女性経営者の星」山村さん、今度は市議会に!
http://www.janjanblog.com/archives/69399
 一緒に「女性議員」をテーマに研究。女性の政治参画がなぜ進まないのか、アンケートを女性議員らに行い、原因を探りました。山村さんは口だけでなく、自らも立候補したわけです。

 また、甲奴町では初めて女性の自治振興区会長も誕生するという快挙が今年、起きました。

 その背景には、山村さんはもちろん、地域の女性の皆様のこれまでの地道な活動があります。封建的な風土を、だんだんと変えていったのです。

 甲奴町小童(ひち)地区には「わらべ」という、古民家を改造したお蕎麦屋さん「わらべ」があります。

http://www.supremehiroshima.com/warabe/


女性経営者の蕎麦屋「わらべ」で山菜天ぷらをいただく。
 

座布団も古い布でつくるなど、リサイクルが徹底。食材も山菜などの「地産地消」です。
まさに、持続可能な社会ビジョンがここで実践されています。ここの店主も女性です。

 また、ある理容店の女性店主は、まきでエネルギーをまかなっておられました。ちょうど、まき割り作業中でした。荒れている山林の整備にも、間伐材利用は有効です。



女性理容店主はマキでエネルギーをまかなっておられる。
 この他、広島県内でも初の女性牧場経営者などにもお会いすることができました。昔は封建的だった甲奴町において、いやだからこそ、逆に先頭に立って道を切り開いてきたみなさんのパワーに、圧倒されました。

 わたくしが訪問した6月3日は、広島大学総合科学部・高谷紀夫(たかたにみちお)教授(文化人類学)のゼミ生らが、泊りがけで甲奴町を調査中でした。今日は、地域の女性の方からお話を伺う日と言うことです。

http://seeds.hiroshima-u.ac.jp/soran/ghd648ba/a.html

  「まちづくりとと言うとどうしても「中年男性」中心に視点がなりがちです。広大生たちは、そこで、今日は中高生、続いて女性からお話を伺うことにしました。」という高谷先生。ゼミ生らは、熱心に二時間近く、地域の女性から話を聞いていました。

 その後、女性会メンバーそして、飛び入り参加のさとうしゅういちも感想を述べさせていただきました。

 福山から結婚で甲奴に移住した女性は「何もない、と最初思った。しかし、都会と違い変な誘惑はないので、子育てがしやすかった。」と回想されていました。一方でこの女性は「最近は、合併で行政が遠くなった。ただ、それに負けてはいられない」と抱負を述べました。

また、同じように、福山から結婚で移住した女性は、文化芸術活動にも進出しているそうです。また、彼女は、障がい者支援で名高い地元の社会福祉法人の役員も務めるなど、大活躍です。「彼女のおかげで、新風が吹きこまれた」と女性会幹部らも感謝していました。

 このように、他地域から移住した女性により、新しい価値観も持ち込まれ、いい影響を地域に与えている様子も観察できました。

 わたしは、福山で生まれた後、東京で24年間過ごしましたが、再び県庁職員として広島県に戻ています。東京中心の政治・経済ではこれからの日本は長持ちしないと思ったからです。東京は、エネルギーを自前で賄えず、福島や新潟の原発から送ってくるし、年を取ったら、過ごす場所がなく、群馬や新潟の施設に送られている実態もあるなど、暮らしにくい場所です。

 わたくしは、2002年から2006年まで、この地域の福祉・医療行政を担当しましたが、最初『俺はすごいところに来てしまった』と感動し、今でも東京に戻りたいとは思いません。甲奴は、地域の食材もうまいし、エコな生活ができます。子育てにも好都合です。こういう場所に若い方が住めるよう、仕事をつくる、そういう社会が必要だ、と痛感しました。

 もはや、日本全体でも資源をガンガン使って右肩上がりにしていく時代は終わりです。これからは、いろんな人の知恵を結集し、長持ちするような経済社会をつくっていく時代です。そういう意味で、山村さんが、口先だけでなく、女性の政治参画を実現されたことに感動しました。

 また、調査にあたっておられる、広大生の皆様も、こうした甲奴に触れることをきっかけに、高度成長〜バブルくらいまでの「常識」にとらわれないことにどんどんチャレンジしていただければ、日本の未来も明るい、と感じました。

さとうしゅういち記者のプロフィール
さとうしゅういち(佐藤周一)。1975年11月12日広島県福山市生まれ、東京都育ち。現在の本籍地は広島市安佐南区祇園
1999年3月、東京大学経済学部卒業。2000年4月、広島県入庁。県庁時代は、労働、医療、介護、男女共同参画などの行政に携わる。一方で、反貧困、野宿生活者支援、女性、若者、非正規労働者支援、男女共同参画、瀬戸内海の環境問題などに関する活動に従事。
2011年1月31日広島県を退職。同4月10日執行の広島県議会議員選挙(広島市安佐南区選挙区)立候補、4278票を獲得するも及ばず。同6月20日〜医療・介護関係の会社員。8月1日から広島市男女共同参画審議会委員。
所属政党 民主党(2011年1月まで)→無所属→みどりの未来(2011年8月から)
2010年度・労働組合・生存のためのメーデー広島実行委員会(略称:生存ユニオン広島)委員長。http://d.hatena.ne.jp/lifeunion/
1996年〜広島瀬戸内新聞社主 http://hiroseto.exblog.jp/
TWITTER:http://twitter.com/hiroseto/