秋葉前広島市長、「アキバ塾」で市民に熱弁

秋葉前広島市長、「アキバ塾」で市民に熱弁
2012年 6月 3日 21:26《広島》 【取材ニュース】 <地域> <外交> <市民活動> <平和> <自治体>
さとうしゅういち

http://www.janjanblog.com/archives/73624

秋葉忠利・前広島市長が、市民に対して公開で講義を行う「ヒロシマ・アキバ塾」が5月31日、開講しました。

第一回の今日は2020年までに核兵器廃絶 平和市長会議と市民の役割という題目で、総論的なことをお話しいただきました。秋葉前市長のお話は、難しいことをわかりやすく伝えてくださいました。

パラダイム変換なくして維新なし
秋葉さんは、『変革とか維新とか日本の春とか叫ばれている。日本を何とかしたいという強い願望はみなある。だけどなぜなかなか実現しないのか?』と問いかけました。

そして、今は『パラダイムの転換』時期だと指摘。右肩あがりから右肩下がりの時代になった。そして、時代をみるさい、二次元から三次元で考えたほうがいい時代になった。これからは「登山から下山」、そして「下山後の平地の時代」になった、という表現で現代をイメージすべき、と指摘しました。

これからは、「山のような(縦)社会」から「平らな都市の時代」になる、というわけです。

広島市は素晴らしい街で、世界トップ200の都市のうち、日本では東京と京都以外では広島しかはいっていない、プレジデントでも、広島市政令市で一番暮らしやすいし、オンブズマン調べでも広島市政令市では二番目に談合疑惑度が低い、ゴミの一人当たり排出量が少ない等、素晴らしい面はたくさんあります。

ただし、今のままでは十分ではない。そこで必要なのが、以下の様なパラダイムの転換とです。

報復から和解へ
国家から都市へ
専門家から市民へ
イデオロギーから人間へ
少数派から多数派へ
支配・被支配からパートナーシップへ。

そして、イメージ的に言えば、いままでは国→自治体→住民というピラミッドが、市民→自治体→国という逆ピラミッドになるのです。

経済の仕組みも資本主義や共産主義というくくりではなくなる。
リアン・アイスラーという女性政策研究家・経済学者によると、以下のような分類になってくる。
中核 家事経済
第二 コミュニティー経済
第三 市場経済
第四 違法経済
第五 政府経済
第六 自然経済(環境との関係)

これらを見通した政策をつくらないといけない。

■都市が世界を動かす時代

秋葉さんは、これからは、「都市」が単位となった「フラットな世界」になるというわけです。

環境問題では、アメリカでは国=当時のブッシュ政権が動かないので、全米市長会議が動き出した。各都市がCO2削減で動いたら、その積み重ねにより、国が動いたのと同じ効果があるのです。
ちなみに、広島は2050年までに70%削減を打ち出しています。これは荒唐無稽ではなく、昭和40年代と同レベルです。技術進歩も加味すれば、生活水準をそんなに落とさずに、実現可能である。というより、そのころには価値観も変わり、生活水準が落ちたという意識もなくなるのではないか、というわけです。

核兵器廃絶の分野でも都市は活躍します。「平和市長会議は、この10年でなんと約10倍に加盟都市が増えた。そこに人口10億が住んでいる」というわけです。この勢いなら、あと10年もしないで、全人口を「平和都市」がカバーできる。

NPT再検討会議でもこうした中で、核軍縮の加速などが約束されました。秋葉さんは、「うまくいっていないと批判するのは簡単。しかし、そもそも、マイナスの状況から、ここまで持ってきたことを評価すべきではないか。」と提起しました。

多くの都市がなぜ、ここまで反核に取り組むのか?それは、戦争になったら「被害を受けるのは都市、そこに住む市民」だからです。

基礎的自治体は、国よりも市民と強く結びついています。制度的に市民と近い。だから、「こんな思いを他人にさせたくない」という気持ちが、広がっていくのです。

広島の場合「こんな思いを他人にさせたくない」というのは、日本人特有の平和主義だという考え方もあり得ます。しかし、日本人は一方で報復劇である忠臣蔵を好みますし、切腹などを持ち上げたりもする。自殺率も高い。必ずしも平和主義とも言えない。やはり、広島では、とくに1945年から10年間、被爆者たちが国家の援護も受けられずに、苦労してきた時期がある。多様な被爆者が、一緒に生活してきた歴史がある。その上に、「こんな思いを他人にさせたくない」という文化ができてきたのではないか、と秋葉さんは指摘しました。

■歴史の進歩に確信を持ち、都市間関係を国際関係のモデルに
都市は軍隊を持ちません。対等な関係を世界においても国境を越えて結ぶ。
一方で国家は、軍事同盟を基軸に考えてしまいがちです。

そこで、都市間の関係をモデルにしてこれからの世界を考えたらどうか?と秋葉さんは提案します。

そんな馬鹿なとおっしゃるかたもおられるでしょう。しかし、500年前は、県に相当する国(甲斐、越後などなど)が武力を持っていました。今でいえば、川中島をめぐって山梨県新潟県が戦争をしていたのです。しかし、現代ではそういうことはありません。

歴史は確実に進歩しているのです。

日本の近代史を見るとどうか?1853年から100年間で戦争で300万人が亡くなりました(朝鮮戦争中も、日本人が機雷除去作業で戦死しています。)。一方、1953年から現在の60年間には戦死者は0です。

アメリカも、1850年から100年間での戦死者は130万人ですが、その後は7万人です。

暴力から平和への流れは確実に進んでいる。
世界史的に見ても、国家ができて、戦死者も減っています。

秋葉さんは、国連の中に、都市代表で構成する下院をつくるよう提案します。
100人が惨禍を受けた都市代表。あとは人口の多い年の代表100人を考えたらいいということです。
これにより、市民参加の外交ができる、ということです。

■元気な街ほどうまく折り合っている

そして秋葉さんは、元気な街ほど多様な人がうまくおりあっているそうです。

ゲイやレズビアンが多い街はそういうことです。シリコンバレーやホースチン、ボストンなどは活気があります。

そして、パッチワークキルトに都市を、一枚一枚の布を人に例えました。パッチワークは多様な布が結局は、暖かい掛け布団をつくります。
「いろいろな人がいるが、全てがことごとく異なるという人はいない。パッチワークのようにいろいろな人が別の人を介して結びつくことで、協力できる。」
と指摘しました。

そして、「ヒロシマには求心力がある」と指摘。

 核兵器のない世界は、一歩手前まで1986年には実現していることも紹介。だめだとあきらめるのではなく、そこまで近づいたことを評価しよう、とおっしゃいました。

そして、ロックグループ9mmParabellum Bullet のWonderlandを紹介し「国境は歴史の傷口で治せる薬を探している」という歌詞を、流しました。

■広島は素晴らしい街、歴史は進んでいることに確信を

秋葉さんのお話を伺い、「歴史はそうはいっても長い目で見れば、確実によい方に向かっている」と感じました。
この点、自分自身、脂汗が出てしまいました。自分は、今までは焦りが先行しがちでした。これからは、さらに秋葉さんのお話にも出てきたように、パッチワークのように、仲間たちと一緒に、歴史の中で何をすべき考え、進んでいきたいと思います。

次回の「アキバ塾」は6月28日(木)19時から広島YMCA(参加料500円)です。

さとうしゅういち記者のプロフィール
さとうしゅういち(佐藤周一)。1975年11月12日広島県福山市生まれ、東京都育ち。現在の本籍地は広島市安佐南区祇園
1999年3月、東京大学経済学部卒業。2000年4月、広島県入庁。県庁時代は、労働、医療、介護、男女共同参画などの行政に携わる。一方で、反貧困、野宿生活者支援、女性、若者、非正規労働者支援、男女共同参画、瀬戸内海の環境問題などに関する活動に従事。
2011年1月31日広島県を退職。同4月10日執行の広島県議会議員選挙(広島市安佐南区選挙区)立候補、4278票を獲得するも及ばず。同6月20日〜医療・介護関係の会社員。8月1日から広島市男女共同参画審議会委員。
所属政党 民主党(2011年1月まで)→無所属→みどりの未来(2011年8月から)
2010年度・労働組合・生存のためのメーデー広島実行委員会(略称:生存ユニオン広島)委員長。http://d.hatena.ne.jp/lifeunion/
1996年〜広島瀬戸内新聞社主 http://hiroseto.exblog.jp/
TWITTER:http://twitter.com/hiroseto/