『子ども手当』だけでは防げなかった『親子孤独死』

子ども手当』だけでは防げなかった『親子孤独死
2012年 4月 3日 20:55 《広島》 【論説】 <医療・福祉> <政治・政党> <生活・家庭>
さとうしゅういち
http://www.janjanblog.com/archives/68230

先日、わたくし、さとうしゅういちの故郷の東京で、母親が病死後に五歳の息子も餓死すると言う悲劇がありました。

わたくし、さとうしゅういちは、炊き出しのボランティア活動で、小さな子どもが親と一緒に野宿する有様を目撃してしまったことがあります。

民主党政権でせめてこういう問題は解決できるかと思った時期もあった。しかし、あれから二年近く、期待は裏切られました。

子どもを社会で育てる。この方向性は正しい。ある意味で「伝統への回帰」とも言えます。

というより、そもそも、戦前くらいまでは、多くの地域で子どもは「地域で育った」ものです。

むしろ、戦後の特に大都市圏では、『男性正社員プラス専業主婦プラス子ども二人』というモデルが主流となり、それが、国の福祉施策のモデルともなったわけです。だが、そこからはみ出したら最後、苦労を強いられるという社会でもあった。なお、今でも地方圏は大都市圏とは違い、専業主婦率も低いがその代わり女性議員率も低いのが実情です。

 それをこれからは変えて行きましょう、そうでないと、持ちませんよ、というのが民主党政権の方向性ではなかったか?自民党でも谷垣総裁あたりは、母親の負担軽減、というのを総裁選挙でも掲げていました。

 しかし、民主党政権は、子ども手当を出したのは良いが、そこに留まってしまった感があります。では、自民党がいいかと言えばそれは違って、小泉純一郎さんが「保育所待機児童ゼロ」を就任時に約束したのに、果たせなかったことは、忘れてはいけません。また、「子ども手当」の名称について、自民党が国会でごねていたのも、見苦しいと思います。子育ての在り方を具体的に提案したほうが、良かったのですが、今の自民党はそういう意味では覇気がないように思えます。

 では、今後、どうすればいいか。いろいろな論者がいろいろなことをすでに言っていおられますが、わたしは、以下のことを提案したいと思います。

 第一に、民生委員・児童委員の報償費改善です。地域で子どもを見守る役と言えば民生委員・児童委員がいます。しかし、報酬は年間58200円(広島県)。大都市ではなり手もいないのが実情です。こういう方々の仕事こそ、もうちょっと評価して行くべきです。市議会議員や県議会議員の報酬を少し削っても民生委員の報酬をあげるくらいすべきでしょう。地域で子育てをすることの評価をきちんとすることが大事です。少額かもしれませんが、今のままよりは、「評価を上げる」ことが大事なのです。

 第二に、高齢社会の中で、新しい形で「三世代共存」を図ることです。

 例えば、老人ホームを保育所位に併設するのです。そこで、元気な高齢者が働ける様にするのです。特に65歳になったばかりで、介護度もないような人なら、働く意欲もある方も多い。そういう方を例えば老人ホーム併設の保育所で働けるようにするのです。これからは、現実問題、年金も厳しい。そうなると、責任ある政治の在り方としては、「今の若者」に対しては、「年を取っても働ける場所」を確保するのも一つの方向性でしょう。

 高齢者にとっても安心、子どもにとっても安心。親にとっても安心。三世代安心の仕組みを作っていけばいいのです。

 橋下徹大阪市長などを支持される方の中に「高齢者ばかり優遇されて怪しからん」という議論をされる方もおられます。しかし、お気持ちはわかりますが、冷静に考えれば、若者もいずれは高齢者になります。現に身内にもおられるわけです。感情論に走るよりは、冷静に、どうやったら、すべての世代がうまく共存できるかを考えたほうがいいわけです。
 
 戦前と同じような、地域とか大家族とかの仕組みをそのまま復活するのはもちろん、とても無理です。現代人のメンタリティや、社会の在り方にフィットした形で、安心をつくっていきたいものです。

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さとうしゅういち記者のプロフィール
さとうしゅういち(佐藤周一)。1975年11月12日広島県福山市生まれ、東京都育ち。現在の本籍地は広島市安佐南区祇園
1999年3月、東京大学経済学部卒業。2000年4月、広島県入庁。県庁時代は、労働、医療、介護、男女共同参画などの行政に携わる。一方で、反貧困、野宿生活者支援、女性、若者、非正規労働者支援、男女共同参画、瀬戸内海の環境問題などに関する活動に従事。
2011年1月31日広島県を退職。同4月10日執行の広島県議会議員選挙(広島市安佐南区選挙区)立候補、4278票を獲得するも及ばず。同6月20日〜医療・介護関係の会社員。8月1日から広島市男女共同参画審議会委員。
所属政党 民主党(2011年1月まで)→無所属→みどりの未来(2011年8月から)
2010年度・労働組合・生存のためのメーデー広島実行委員会(略称:生存ユニオン広島)委員長。http://d.hatena.ne.jp/lifeunion/
1996年〜広島瀬戸内新聞社主 http://hiroseto.exblog.jp/
TWITTER:http://twitter.com/hiroseto/